「北海道の小学生はランドセルを使わないって本当?」
「転勤が決まったけれど、高価なランドセルを買って浮いてしまわないか心配……」
北海道への移住や入学準備を控えたご家庭から、このような相談をよく受けます。本州では「6年間ランドセル」が当たり前ですが、ここ北海道では少し事情が異なります。結論から言えば、ランドセルを使う子はいますが、6年間使い続けるケースは少数派であり、独自のリュック文化が根付いている地域も多いのです。
決して「ランドセル禁止」というわけではありませんが、そこには北国ならではの「雪」と「安全」に対する切実な理由があります。この記事では、北海道の通学事情に詳しい立場から、なぜランドセルが使われないのか、その背景と実際の選択肢について詳しく解説します。
- 北海道特有の「雪道」とランドセルの相性
- 小樽発祥の軽量カバン「ナップランド」とは
- ランドセルからリュックへ切り替えるタイミング
- 失敗しないカバン選びと学校ルールの確認方法
北海道でランドセルを使わない理由:雪国の過酷な現実

なぜ北海道ではランドセル離れが進んでいるのでしょうか。単なる「文化の違い」で片付けることはできません。そこには、子どもの命と安全を守るための、極めて合理的な理由が存在します。まずは、気候条件と物理的なリスクの面から掘り下げていきましょう。
雪道での安全性と転倒時のリスク(重さ・バランス)
北海道の冬、通学路は圧雪アイスバーンや深い雪に覆われます。この環境下で、本革や人工皮革の箱型ランドセルは、時に「危険な重り」となってしまうことがあります。一般的なランドセルの重さは約1,100g〜1,300gですが、教科書やタブレットを入れると総重量は4kg〜5kgにも及びます。
ツルツルの路面で足を取られた際、背中に重たくて硬い箱を背負っていると、重心が後ろに引っ張られて後頭部を強打するリスクが高まります。また、一度転倒すると、ランドセルの厚みで「亀の子」状態になり、雪深い場所では自力で起き上がるのが困難になるケースさえあるのです。
実際に、地域の保護者の間では「転んだ時に受け身が取りやすいよう、体に密着する柔らかいリュックの方が安心」という声が根強くあります。ランドセルは丈夫ですが、その「硬さ」と「重心の遠さ」が、冬の北海道ではデメリットに転じてしまうことがあるのです。
ここがポイント
ランドセルは「後ろに転びやすい」だけでなく、吹雪の際にフードを被ろうとしても、ランドセルの高さが邪魔をしてフードが浅くなり、視界や防寒性が損なわれることもあります。
冬の通学環境とスキーウェア・防寒着との相性
北海道の小学生の冬の正装は、モコモコのスキーウェア(スノーコンビ)です。分厚いダウンや中綿入りのウェアを着た上に、さらにランドセルの肩ベルトを通すことを想像してみてください。これは子どもにとって相当な窮屈さを強いることになります。
ランドセルの肩ベルトは調整可能ですが、夏服と冬服(スキーウェア)では厚みが全く異なります。毎朝ベルトの長さを調整するのは現実的ではなく、結果として「腕が通しにくい」「動きにくい」というストレスが発生します。特に低学年の子どもにとって、着膨れした状態で硬い革ベルトを背負うのは一苦労です。
一方で、アウトドアブランドのリュックや後述する「ナップランド」などの布製カバンは、肩紐が柔らかく、ウェアの厚みに柔軟にフィットします。登下校に片道20〜30分歩くことも珍しくない北海道において、動きやすさはそのまま防寒性能(暖かさ)の維持にも直結する重要な要素なのです。
小樽発祥「ナップランド」など指定カバンの存在

北海道でランドセルを使わない理由を語る上で欠かせないのが、小樽市を中心に普及している「ナップランド」の存在です。これは「ナップサック」と「ランドセル」を掛け合わせた造語で、小樽の鞄メーカー(村田翆光堂など)が製造・販売しているナイロン製の通学カバンです。
小樽は坂の多い街です。「坂道と雪道で重いランドセルを背負うのはかわいそうだ」という親心から開発されました。価格は6,000円〜7,000円台と、一般的なランドセル(6万円〜8万円)の約10分の1。重量も約600g〜700gと非常に軽量です。このナップランドが小樽だけでなく、札幌市の一部や近隣市町村にも影響を与え、「必ずしも高価な革製ランドセルでなくて良い」という土壌を作りました。
「ランドセルはいつまで?」北海道独自の切り替え時期

「入学時はランドセルを買ったけれど、卒業まで使うの?」という疑問もよく耳にします。本州では6年間使い切るのが一般的ですが、北海道、特に札幌などの都市部では、学年が上がるにつれてランドセル使用率が激減する現象が見られます。
小学2年生〜3年生でリュックに切り替える「小2の壁」
多くの北海道の小学校で見られるのが、小学2年生または3年生あたりでランドセルを卒業し、スポーツブランドのリュックサック等に切り替えるという流れです。これを私は密かに「ランドセル小2の壁」と呼んでいます。
理由は単純で、1年生のうちは「交通安全の黄色いカバー」を付けるためにランドセルを使用しますが、カバーが外れる2年生進級時や、体が大きくなってくる3年生のタイミングで、「重いし、もうリュックでいいよね」となる家庭が多いためです。ある調査では、高学年でのランドセル使用率がクラスの数割、あるいはゼロに近いという学校も報告されています。
また、北海道の小学校は「置き勉(教科書を学校に置いて帰ること)」に対して柔軟な学校が多く、持ち帰る荷物が宿題とプリント程度であれば、巨大なランドセルはオーバースペックだという判断も働いています。
高学年でランドセルを背負わないのは「おかしい」のか?
結論から言うと、北海道では高学年でランドセルを使っていなくても全くおかしくありません。むしろ、リュック通学がマジョリティ(多数派)になる地域が多いです。アディダス、ナイキ、プーマ、ノースフェイスなどの丈夫なボックス型リュックが人気を集めています。
逆に言えば、もし「6年間大切にランドセルを使ってほしい」と願って高価な工房系ランドセルを購入しても、お子さんが3年生くらいで「周りはみんなリュックだから、僕も変えたい」と言い出す可能性が非常に高いということです。
注意点
高価なランドセルを買っても、実質2〜3年しか使わない可能性があります。「6年使う前提」で10万円近い出費をする際は、この地域性を十分考慮する必要があります。
地域差のリアル:札幌・小樽と地方都市の違い

一口に北海道といっても広大です。全ての地域でランドセルが使われないわけではありません。地域別の傾向をざっくりと把握しておきましょう。
- 小樽市・余市町周辺: ナップランド(または類似のナイロン鞄)が主流。
- 札幌市・旭川市などの都市部: 入学時はランドセル、中〜高学年でリュックへ移行する「ハイブリッド型」が多い。
- 函館市や一部の地方部: 本州と同様に6年間ランドセルを使う学校もあれば、リュック指定の学校もある。
特に転勤族の多い地域や、新興住宅地では本州の文化が持ち込まれ、ランドセル使用率が高い傾向にあります。一番確実なのは、入学予定の小学校の登下校風景を実際に見に行くか、学校説明会で確認することです。
ランドセル以外の選択肢と機能比較

では、ランドセルを選ばない場合、具体的にどのようなカバンを選べばよいのでしょうか。北海道で選ばれている主な選択肢を比較してみましょう。
北海道の定番「ナップランド」 vs 機能性リュック
選択肢は大きく分けて3つ。「従来のランドセル」「ナップランド(小樽式)」「アウトドア・スポーツブランドのリュック」です。最近では、モンベルの「わんパック」のように、ランドセルの機能を持ったナイロン製リュックも登場し、選択肢は広がっています。
| 比較項目 | 一般的なランドセル | ナップランド | 機能性リュック |
|---|---|---|---|
| 価格相場 | 5万〜8万円 | 6,500〜8,000円 | 5,000〜15,000円 |
| 重量 | 1,100〜1,300g | 600〜700g | 400〜900g |
| 雪道安全性 | △(重い・硬い) | ◎(軽い・密着) | ◎(動きやすい) |
| 耐久性 | ◎(6年保証多し) | ◯(丈夫なナイロン) | ◯(買替え前提) |
| 収納力 | A4フラット対応 | A4対応 | 製品による |
このように比較すると、コストパフォーマンスと雪道での機動性において、ナップランドやリュックに軍配が上がることがわかります。特に価格面では、ランドセル1個分でリュックなら10個買えてしまう計算になります。「汚れたら買い替える」「成長に合わせてサイズアップする」という合理的な考え方が、北海道民の気質(なんもだよ精神)に合っているのかもしれません。
モンベル「わんパック」や「ランリュック」の台頭
近年注目されているのが、アウトドアブランドのモンベルが開発した通学用バックパック「わんパック」です。富山県立山町の要望から生まれた製品ですが、雪や雨に強く、PC収納もあり、価格も1万円台とお手頃であることから、北海道の保護者の間でも急速に認知されています。
「完全にリュックだと教科書が折れないか心配」「でも重いランドセルは嫌だ」という層にとって、箱型の形状を保ちつつナイロン素材で軽量化した「次世代ランドセル(ランリュック)」は、北海道の通学事情に最適な解と言えるでしょう。
保護者が気になる「いじめ」や「学校のルール」

合理的な理由はわかっても、親心として心配なのは「みんなと違うことでいじめられないか」「学校のルール違反にならないか」という点ですよね。
「みんなと違うカバン」でいじめられる心配はある?

結論から言うと、カバンの違いがいじめに繋がることは極めて稀です。先述の通り、北海道(特に小樽や札幌)では多種多様なカバンが混在しています。ランドセルの子もいれば、ナップランドの子も、スポーツリュックの子もいます。
北海道には「なんもだよ(気にしなくていいよ、大丈夫だよ)」という大らかな方言があるように、他人の持ち物に対して細かいことを言わない土壌があります。また、高学年になればリュックが主流になるため、「ランドセルじゃない=恥ずかしい」という感覚自体が希薄です。
入学前に確認すべき学校指定・推奨のルール
ただし、地域や学校によっては「1年生まではランドセル(またはそれに準ずる形状)を推奨」としている場合や、私立小学校などでは指定鞄がある場合もゼロではありません。
チェック手順
1. 入学説明会の資料(服装・持ち物の欄)を確認する
2. 登下校時間の小学生を観察する(一番確実です!)
3. 学校に直接電話で「ランドセル以外の通学カバンでも問題ないか」と問い合わせる
特に「3. 学校への問い合わせ」は恥ずかしいことではありません。「腰痛持ちで軽いものにしたい」「雪道が心配」などの理由を添えれば、多くの学校が柔軟な回答(基本は自由、リュック可など)をくれるはずです。
Q. 北海道の小学校には体操服がないって本当?
A. 本当です。多くの公立小学校には指定の体操着がなく、動きやすいジャージやTシャツを各家庭で用意します。冬は登下校に着ている防寒着の下にジャージを着ておき、そのまま体育をするケースも珍しくありません。
Q. 結局、ランドセルはいつ買うべき?
A. ランドセルを購入する場合、北海道でも人気の色やモデルは夏頃に売り切れます。ただし、リュックやナップランドを検討しているなら、焦る必要はありません。年明けや入学直前でも十分間に合います。
Q. 祖父母が「高いランドセルを買ってあげたい」と言う時は?
A. 感謝を伝えつつ、「北海道は雪で転ぶと危ないから、軽いカバンにする人が多いみたい」と安全面を理由に説明するのが角が立ちません。浮いた予算で学習机や防寒着をおねだりするのも賢い方法です。
Q. ナップランドはどこで買えるの?
A. 小樽市内のバッグ店(村田翆光堂など)や、札幌市内の百貨店・大型スーパーのランドセル売り場で取り扱っています。現在は公式サイトからのネット通販も可能です。
Q. ランドセルを使わない地域の代表例は?
A. 北海道の小樽市が最も有名ですが、実は本州でも京都府亀岡市や長野県の一部など、独自の「ランリュック」や指定カバンを採用している地域が存在します。
Q. 冬の体育はスキー授業があるの?
A. 多くの学校でスキー授業があります。その日はスキー板や靴を持って登校する必要があるため、背中のカバンは少しでも軽く、両手が空くタイプ(リュック型)が圧倒的に有利です。
まとめ:北海道でランドセルを使わない理由と親の心構え
北海道でランドセルが必須ではない背景には、雪国ならではの「命を守るための合理性」がありました。周りに合わせて無理に高価なランドセルを買う必要はありません。お子さんの体格や通学路の状況に合わせて、一番安全で快適なカバンを選んであげてください。
- 北海道でランドセルを使わない主な理由は「雪道での安全性」と「防寒着との相性」
- 小樽市を中心に、安価で軽量な「ナップランド」が普及している
- 札幌などでも小学2〜3年生でランドセルからリュックへ移行する子が多い
- 高価なランドセルを買っても6年間使わない可能性が高いため注意が必要
- 冬の転倒リスクを考えると、重心が安定するリュック型が推奨される
- 「みんなと違う」ことでいじめられる心配は北海道ではほとんどない
- 学校指定がないか、入学前に説明会や電話で確認するのが確実
- モンベルなどの機能性リュック(次世代ランドセル)も有力な選択肢
- 体操服がない学校も多く、北海道の学校ルールは本州と違う点が多い
- 祖父母には「雪道の安全のため」と説明するとスムーズ
- ランドセルカバーは1年生の間はつけるが、外れると同時にリュック化が進む
- 最終的には「子どもが背負いやすく、安全に通えること」が最優先
